フレンチトーストの正体
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【食材のトリセツ】フレンチトーストの正体 — 実はフランス発祥ではない理由

#食材のトリセツ

答え:フランス発祥ではなく、古代ローマから続く「固くなったパンを蘇らせる知恵」。米国で命名された料理。

「フレンチトースト」——名前からしてフランス生まれの気がしますよね。ところがフランスにはこの名前の料理は存在しません。フランスでは「パン・ペルデュ(Pain perdu)」、直訳すると「失われたパン」「見捨てられたパン」と呼ばれています。

では、なぜ英語圏で「フレンチトースト」と呼ばれるようになったのか?——ルーツを辿ると、実は古代ローマ時代のレシピ書にまで遡ります。フランスどころか、2000年以上前から世界中で作られていた「固くなったパンを美味しく蘇らせる知恵」が、フレンチトーストの正体なのです。

POINT

  • ポイント①:起源は古代ローマの料理書「アピキウス」:紀元4〜5世紀のローマ料理書『アピキウス(Apicius)』に、「牛乳に浸したパンを卵でくるんで揚げ焼きにする」レシピが記載されています。これがフレンチトーストの最古の記録。当時から「余ったパンを甘く食べる工夫」は世界中に存在し、フランスのパン・ペルデュ、イギリスのプア・ナイツ・プディング、ドイツのアルメ・リッターなど、各国に類似料理があります。
  • ポイント②:「フレンチ」の名は米国で18世紀に命名:有力な説では、1724年アメリカ・ニューヨーク州オールバニの居酒屋店主ジョセフ・フレンチ(Joseph French)が考案し、自分の名字「French’s Toast(フレンチさんのトースト)」と名付けたのが由来とされます(アポストロフィが抜けて「French Toast」に)。フランス国籍とは無関係——これは名前が独り歩きした典型例です。
  • ポイント③:「固くなったパンが美味しくなる」科学的理由:焼きたてのパンより数日経った固いパンの方がフレンチトーストに向くのは、パンの内部構造が乾燥してスポンジ状になり、卵液を大量に吸収できるから。さらに卵のタンパク質と牛乳の糖分が加熱でメイラード反応を起こし、外はカリッ・中はジュワッの理想的な食感が生まれます。パンが古いほど美味しくなる、稀有な料理です。

プロの技:プロが作る絶品フレンチトーストの黄金比

プロが目指すのは「表面はキャラメリゼされた琥珀色、中は卵液で満たされたプリン状」の断面。そのための黄金比が「卵1個:牛乳100ml:砂糖大さじ1」、そして「浸す時間は最低30分、理想は一晩」です。

厚切りパン(2〜3cm)を密閉容器に入れて冷蔵庫で寝かせると、パンの中心まで卵液が浸透。焼く時はバター+弱火で片面5分ずつじっくり——強火で焼くと表面だけ焦げて中は生っぽくなります。

また、蓋をして焼くとさらに良。熱が中心まで加わることで中心がベシャッとしないでふわっとする。3分くらい蓋をして蒸し焼きにした後蓋を外して2分くらい焼くと外もカリッとします。

仕上げにバター+少量のサラダ油を追い足ししてヌワゼット(きつね色に焦がしたバター)を回しかければ、香ばしさが一段上に。ホテルの朝食で出るあの高級感は、時間と温度管理で作られているのです。

辻眞樹
監修 辻眞樹

雑誌編集者から料理人に転向。和食店での板場やイタリアンで腕を磨き、2013年に株式会社SLDの統括料理長に就任。その後フィリピン・セブ島で洋食レストラン開業し、帰国後は出張シェフなどに従事。

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