ピッケの方法
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【調理用語 フランス料理】「ピッケ」— 刺して通す、穴を開けて逃がす。目的語で意味が決まる

#世界の厨房辞典

定義

ピッケ(Piquer): 表面に小さな穴を開ける、または食材に別の素材(ラルドン、クローブ、香草など)を差し込む動作。料理によって目的が変わり、大きく2つに分かれます。ひとつは「通す」——脂身の薄い肉にラードンを差し込んで脂と旨味を行き渡らせる、ブイヨンの玉ねぎにクローブを刺して香りを通す。もうひとつは「逃がす」——タルト生地にフォークで穴を開けて、加熱時の蒸気と空気を逃がし底の膨らみを防ぎます

フランス語の正式スペルと発音

Piquer [ピケ] – 動詞(現場の慣例読みは「ピッケ」)。pic(ピーク=尖ったもの)+-er。ラテン語pungere(刺す、貫く)に遡り、英語のpierce・punctureと同系です。同じ語源からは「ピカント(piquant=舌を刺すような辛さ・刺激)」という味の形容詞も生まれています。過去分詞piqué(ピケ)は「刺し込み済み」の意で、「bœuf piqué(ラードン入りの牛肉)」のように料理名にも使われます。

語源 / 歴史

pungereは「刺して穴を開ける」のが原義で、そこから「点(punctum)」を意味する語も派生しました。ラルドワール(lardoire)と呼ばれる専用の針で肉にラードンを差し込む技法は、冷蔵技術のない時代に脂身の少ない肉を保存しつつ美味しく食べるための技法です。

実際の厨房での使い方

例文① 「この肉、脂身が薄いからラードンでピッケしといて」 → ラルドワールで裂け目を作り、細切りにしたラードンを差し込む。繊維に沿って入れると加熱で肉が収縮しても抜けにくく、深すぎると裏に飛び出すので角度が肝心です。

例文② 「タルト生地、フォークでピッケ。膨らんで底が浮くから」 → 底全体に均一な穴を開け、蒸気と空気を逃がします。穴が浅いと蒸気が溜まって局所的に膨らむため、「底まで通す」のがコツです。

例文③ 「ブイヨンのオニオン、クローブをピッケしといて」 → 玉ねぎに丁子(クローブ)を突き刺した「オニオン・クロテ」。煮出すとクローブの香りがゆっくり抜けて、取り出しも簡単になります。

調理の際のポイント

  • 「何を・何で・通すのか逃がすのか」を先に言う — ピッケは目的語で意味が決まります。「ラードンでピッケ」「フォークでピッケ」のように道具とセットで指示すると、現場で誤解が起きません。
  • ラードンは繊維に沿って差し込む — 直角に突き刺すと加熱の収縮で落ちます。裂け目→差し込み→表面を撫でて隠す、までが一仕事。
  • 生地の穴は「底まで」均一に — タルトの穴あけは浅く打つと意味がありません。フォークが底に当たる音を目安に、全面を均一に。
  • 赤身のカット肉への事前の穴あけは肉汁の出口にもなる — 「通す」(ラードン・ニンニクの差し込み)と「逃がす」(生地)かで判断し、目的のない穴あけはしない。差し込む用途がピッケの本来の姿です。

腕を上げる一番の近道は、いろいろな厨房を見ること。

用語を知ることも、その一歩。この辞典で覚えた言葉は、次の現場で号令として耳に入ってきたとき、初めて身になります。CHEFLINKには、全国の厨房をスポット勤務で知れる仕組みがあります。言葉と経験を重ねながら、腕を磨いていく——その現場探しに、ぜひ使ってください。

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山中 幸夫
監修 山中 幸夫

フレンチシェフ。ラマンディエドムージャン、グレイ ダルビオン、ラタントクレールといったフランスやスイス、ロンドンの複数の星付き店で5年半の海外修行。帰国後は有名フランス料理店のシェフを歴任し、渋谷松濤にて幻の尾崎牛を扱うBistro eightのシェフとして活躍した後、フリーランスとして独立。シェフリンクではスポットワークを中心に都内の店舗や沖縄から北海道まで全国で活躍

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