海外で働く料理人に必要な英語レベルとは。厨房で通じる最低ラインを解説
「海外で働きたいけれど、英語がネックで一歩踏み出せない」——そんな声を現場でよく聞きます。実は厨房で必要な英語は、日常英会話とは別物です。本記事では、国別ビザ要件からポジション別の最低ラインまで、リアルな数字と現場のフレーズで解説します。
結論:厨房で通じる英語の「最低ライン」はCEFR A2〜B1
結論、海外の厨房で「仕事が回るライン」は、CEFR A2(初級後半)〜B1(中級)程度。TOEICで言えばおおむね400〜600点の範囲です。
ビザ取得や現場での昇進を狙うなら、B2(TOEIC730点前後)まで引き上げると選択肢が一気に広がります。「ペラペラ」でなくてOK。ただし、厨房で飛び交う特有のフレーズと数字の聞き取りは必須です。
そもそも厨房英語と日常英会話は別モノ
海外で働く先輩シェフが口を揃えて言うのは、「日常会話より、キッチン英語のほうが優先」ということ。理由はシンプルで、厨房で使う語彙は限定的かつ反復されるからです。オーダー、下ごしらえ、火入れ、盛り付け、清掃——1日に飛び交うフレーズはおよそ200〜300パターン。
ここを押さえれば、初日から戦力になります。逆に、いくら日常会話が流暢でも、”86″(品切れ)や “on the fly”(大至急)を知らなければ現場では通用しません。
【国別】ビザ取得に必要な英語レベル
海外就労で最初のハードルとなるのが就労ビザ。国によって求められる英語レベルは大きく異なります。
イギリス
Skilled Worker visaでは原則CEFR B2(中上級)以上が要件。IELTSで5.5〜6.0程度が目安です。ただし、シェフ職の新規申請は一部要件が緩和されるケースもあり、最新の要件確認が必要です。
オーストラリア
TSSビザ(サブクラス482)でシェフとして就労する場合、IELTS各セクション5.0以上(Overall 5.0)が一般的な基準。永住権につながる中期ストリームでは、より高いスコアが求められます。
アメリカ
H-2B、E-2、J-1、EB-3など複数の選択肢があり、ビザ自体に統一された英語スコア要件はありませんが、面接や現地就労には実務レベルの英語が求められます。TOEIC600点以上が現実的なライン。
フランス・ドイツなど非英語圏
現地語(フランス語・ドイツ語)が最優先。ただし高級店や国際的なレストランでは英語がキッチン共通語になっているケースも多く、英語B1レベルがあれば入口としては十分機能します。
【ポジション別】現場で求められる英語レベル
コミ(Commis Chef/見習い)
最低ラインはA2〜B1。指示を正確に聞き取り、”Yes, Chef!” と即応できることが最優先。細かい会話力より、集中力と反射神経が評価されます。TOEIC400〜500点でもスタート可能。
シェフ・ド・パルティ(Chef de Partie/部門責任者)
B1〜B2が目安。自分のセクションを管理し、コミに指示を出す立場のため、能動的な英語運用が必要になります。TOEIC600〜730点程度。
スーシェフ(Sous Chef/副料理長)
B2以上が必須。シフト管理、仕入れ交渉、スタッフ教育まで担うため、英語で「書く・話す・交渉する」フル運用が求められます。TOEIC730点以上。
ヘッドシェフ/エグゼクティブシェフ
C1レベル(TOEIC860点相当)が理想。オーナーや取引先との商談、メニュー開発のプレゼン、メディア対応まで含まれます。
厨房で必ず使う英語フレーズ30
英語圏の厨房で働く場合、まずはこれだけはおさえましょう。フレーズを「聞いて即動く」レベルまで落とし込みましょう。
- “Yes, Chef!”(了解しました)
- “Behind!”(後ろ通ります)
- “Hot!”(熱いもの通ります)
- “Sharp!”(刃物通ります)
- “Corner!”(角を曲がります)
- “Coming through!”(通ります)
- “Heard!”(聞こえました/了解)
- “On the fly!”(大至急で)
- “All day”(合計オーダー数)
- “86 (eighty-six)”(品切れ/中止)
- “Fire!”(調理開始)
- “Pick up!”(提供準備完了)
- “Walking in”(新規オーダー)
- “Push!”(多めに準備)
- “Drop it”(投入して)
- “Marker”(オーダー票)
- “Mise en place”(仕込み)
- “Prep”(下ごしらえ)
- “Family meal”(まかない)
- “Deuce”(2名席)
- “Top”(人数の単位)
- “Sub”(代替品)
- “Weeded”(オーダー溢れ状態)
- “In the weeds”(パニック状態)
- “Working on it”(対応中)
- “Need a hand?”(手伝おうか?)
- “Killed it”(完璧に仕上げた)
- “Reset”(セッティングし直し)
- “Clean as you go”(都度清掃)
- “Wrap it up”(片付けて)
フランス料理厨房で使うフランス語も並行して覚える
英語圏のファインダイニングでもフランス語由来の調理用語は共通言語です。”julienne”(千切り)、”brunoise”(極小角切り)、”mise en place”(仕込み)、”chef de partie”、”sous chef” など、フランス語ベースの語彙を押さえておくと、どの国のキッチンでも通用しやすくなります。
渡航前の学習ロードマップ(3ヶ月〜6ヶ月)
渡航3ヶ月前まで
YouTubeの厨房系動画(Gordon Ramsayのキッチン映像、”Kitchen Nightmares” など)を字幕付きで毎日30分。耳を「厨房のスピード」に慣らします。TOEIC受験で現在地の把握もこのタイミング。
渡航1ヶ月前
上記30フレーズを完全暗記。加えて、自分の得意料理を英語でレシピ説明できるように練習。面接や試作(トライアル)でほぼ確実に問われます。
渡航直後
シャドーイング+現場メモ。聞き取れなかったフレーズはその場でメモし、翌日必ず復習。3週間で「厨房耳」ができあがります。
「英語が話せない」を突破した先輩シェフの実例
実際、英語がほぼゼロの状態でドイツ・フランクフルトの日本食レストランに渡り、副店長まで昇進したシェフもいます。彼女が語るのは「行動してからの悩みが、本当の悩み」という言葉。準備しすぎて動けないより、最低ラインの英語+強い意志で飛び込んだほうが、現地で伸びるスピードは圧倒的に速いということです。
まとめ:英語は「入口の鍵」、伸ばすのは現地で
海外で働く料理人に必要な英語レベルは、ポジションと国によって幅がありますが、最低ラインはCEFR A2〜B1(TOEIC400〜600点)+厨房フレーズ30個。この基礎さえあれば、現地に飛び込んでから伸ばす余地は十分にあります。
大切なのは、完璧を目指して立ち止まらないこと。次のキャリアを描き始めた今が、動き出しのベストタイミングです。
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