飲食店の人手不足は、求人を出しても埋まらないという採用上の問題のみにとどまらず、ピーク時間の欠員、急な休み、専門スキルの不足、教育負担が重なり、ひいては売上機会やスタッフの定着にも影響します。
この記事では、最新の公表データとCHEFLINK独自調査をもとに、飲食店の人手不足の実態を整理。数字を眺めて終わらせず、自店の課題を切り分け、短期と中長期の施策へつなげる考え方を解説します。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」では、2026年7月時点で、非正社員の不足を感じている飲食店の割合は57.7%でした。前年同月からは4.1ポイント低下したものの、調査対象業種のなかで最も高い水準です。改善傾向だけを見て「採用難は解消した」と判断するのは早いでしょう。
同調査の2026年4月時点では飲食店が59.1%、2026年1月時点では58.6%でした。月によって上下しながらも、飲食店ではアルバイト・パートを含む非正社員の確保が継続的な経営課題になっています。
厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2026年6月の有効求人倍率は1.18倍、正社員有効求人倍率は1.00倍でした。新規求人は前年同月比で、宿泊業・飲食サービス業などで増加しています。求人が動いている一方で、必要な時間帯や経験を持つ人材が店舗に届くとは限りません。飲食店では「求人の数」よりも「必要な条件との適合」を見ることが大切です。
出典:帝国データバンク、厚生労働省、CHEFLINK公式発表。割合は各調査の定義・対象に基づくため、単純比較ではなく傾向把握に使用。
添付の「飲食店の海外展開に関する調査」では、飲食事業者など328社を対象に、人材全般の課題を複数回答で尋ねています。これは飲食店全体を推計する公的統計ではありませんが、事業者が実際にどの課題を同時に抱えているかを把握する参考データになります。
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| 課題 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
| 慢性的な人手不足 | 156社 | 47.6% |
| 採用コストが高い | 84社 | 25.6% |
| 急な欠勤への対応が難しい | 78社 | 23.8% |
| 定着率が低い | 77社 | 23.5% |
| 特定スキルを持つ人材が見つからない | 74社 | 22.6% |
| 育成・教育に時間がかかる | 74社 | 22.6% |
| 採用に時間がかかる | 58社 | 17.7% |
| 繁閑の差への対応 | 55社 | 16.8% |
出典:回答数328、複数回答のため割合の合計は100%になりません。
最も多かったのは「慢性的な人手不足」でした。ただし、回答はそれだけではありません。採用コスト、急な欠勤、定着、スキル、教育が並んでいることから、現場の課題は採用・配置・定着・育成が連鎖する複合問題だと読み取れます。
人員が足りないと、席数を制限する、予約を断る、メニューを絞る、提供時間が延びるといった形で売上機会を失います。営業しているのに売上が伸びない場合、客数ではなく「提供できるキャパシティ」を確認する必要があります。
欠員を管理職や熟練者の残業で埋め続けると、休暇が取りにくくなり、判断業務や教育まで後回しになります。穴を埋めるための頑張りが、次の離職を生む構造になっていないかを見直しましょう。
忙しい店舗ほど新人に教える時間を確保できません。仕事の全体像がわからないまま現場に入り、質問しづらくなり、早期離職につながることがあります。教育は余裕があるときに行う付属業務ではなく、人手不足を再生産しないための運営機能です。
高単価採用や残業だけで対応すると人件費が膨らみ、人件費を削りすぎると営業力が落ちます。見るべきは人件費の大小ではなく、売上が発生する時間帯に必要なスキルを配置できているかです。
飲食店の現場では、必要人数が1日を通して一定ではありません。ランチ、ディナー、週末、宴会、季節イベントで負荷が変わるため、在籍人数が足りていてもピーク帯だけ回らないことがあります。
さらに、調理・仕込み・洗い場・接客・発注など、業務ごとに必要な経験が異なります。「1人採用できた」ことと「店舗に必要な機能が埋まった」ことは同じではありません。人手不足データを見るときは、総人数だけでなく、時間帯・職種・熟練度・欠勤耐性まで分解して考えることが重要です。
公表統計や業界調査は、経営環境を理解するうえで役立ちます。一方、実際に改善へ動くには、自店の数字を同じ粒度で記録する必要があります。最初から複雑な人事システムを導入する必要はありません。店長が毎週確認できる簡単な表から始めるだけでも、感覚頼みの判断を減らせます。
シフト表に名前が入っているだけでは、戦力を正確に把握できません。たとえば、研修中のスタッフ、仕込みに入れるスタッフ、ピーク帯の接客を任せられるスタッフは、それぞれ役割が異なります。時間帯ごとに「必要人数」「確定人数」「実際に稼働した人数」を記録し、欠員がどこで発生したかを確認しましょう。
応募が少ないのか、面接設定まで進まないのか、採用後に辞退されるのかで、対策は変わります。求人閲覧数、応募数、面接数、採用数、初回勤務数を段階ごとに記録すると、ボトルネックが見つかります。応募数を増やすことだけに注力しても、面接や初回勤務で離脱していれば、人手不足は解消しません。
採用直後は順調に見えても、数週間後にシフトから消えるケースがあります。入社後1週間、1か月、3か月などの節目で在籍と勤務状況を確認し、退職理由や困りごとを残しましょう。少人数の店舗では、1人の退職が大きな欠員になります。定着率を継続的に追うことは、採用費を守ることにもつながります。
同じ「人手不足」でも、原因によって優先する施策は異なります。自店のデータを、次のように課題別へ振り分けると、対策の順番を決めやすくなります。
勤務地、勤務時間、給与、仕事内容が求職者に伝わっているかを確認します。飲食店の求人では、忙しさや未経験可否、まかない、シフトの柔軟性など、働くイメージを左右する情報も重要です。求人媒体を増やす前に、現在の求人票で「誰が、いつ、何をする仕事なのか」が明確かを見直します。
採用時に伝えた内容と、実際の勤務条件に差がないかを確認します。加えて、初日の説明、制服や備品の準備、質問できる相手、最初に任せる業務を整えます。新人にいきなり全業務を任せるのではなく、達成しやすい仕事から段階的に任せるほうが、仕事を覚える安心感をつくりやすくなります。
すべての業務に経験者を求めるのではなく、専門性が必要な工程を特定します。たとえば、メニューの核となる調理や品質管理は経験者が担い、盛り付け、洗い場、仕込みの一部は手順書で標準化する方法があります。採用条件を緩めるのではなく、業務の分解によって必要なスキルを適正化する考え方です。
欠勤者を責めるだけでは、代替体制は整いません。連絡方法、代替要員の候補、任せられる業務、営業時間を守るための縮小オペレーションをあらかじめ決めておきます。外部人材を利用する場合も、必要なスキルや入店時のルールを事前にまとめておけば、受け入れ側の負担を下げられます。
人手不足が続くと、採用活動を強化することが最優先に見えます。しかし、採用市場の競争が激しいときほど、今いる人材が働き続けやすい設計と、少人数でも品質を守れるオペレーションが重要です。
注文が集中するメニュー、仕込みに時間がかかるメニュー、食材ロスが多いメニューを確認します。人気メニューを残しながら工程を整理したり、仕込みの共通化を進めたりすることで、調理担当者の負荷を下げられることがあります。メニュー変更は売上や顧客満足にも関わるため、提供数、調理時間、粗利を見ながら判断しましょう。
ピーク帯のスタッフが、発注や清掃、翌日の仕込みまで同時に抱えていると、接客や調理に集中できません。ピーク前に終わらせる仕事、ピーク後に回せる仕事、専門人材でなくても担当できる仕事を分けます。時間帯別の役割表を作るだけでも、現場の迷いを減らせます。
人員が十分だった時期の手順をそのまま残していると、現状と合わなくなることがあります。忙しい日の優先順位、提供を止めない最低限の作業、後日に回せる作業をチームで共有します。現場が判断できる基準を持つことで、店長や料理長への確認集中も抑えられます。
外部人材は、採用が決まるまでのつなぎだけでなく、繁忙期や新規出店、急な欠員に対応する選択肢です。ただし、依頼すれば自動的に現場が回るわけではありません。受け入れ前に、次の情報を整理しておきましょう。
特に専門人材を依頼する場合は、料理ジャンルや担当範囲だけでなく、店舗の設備、メニュー構成、仕込み量も共有するとミスマッチを減らせます。初回利用後は、スキルだけでなく、コミュニケーション、段取り、既存スタッフとの連携も振り返り、次回の依頼条件に反映します。
人手不足を現場だけの問題にしないためには、月次や週次の会議で確認する項目を決めておくことが有効です。たとえば、次のような問いを定例化できます。
この確認を続けると、「採用を増やすべき店舗」と「配置や業務設計を変えるべき店舗」を分けて考えられます。複数店舗を運営する企業であれば、店舗ごとの数値を並べ、成功したシフト設計や教育方法を横展開することも可能です。
当日の欠勤や繁忙日の増員は、長期採用の結果を待てません。現場経験のある外部人材を必要な日・時間だけ活用できれば、営業を止めずに既存スタッフの負荷も抑えられます。
求人票には、給与だけでなく、担当業務、必要スキル、勤務時間の見通し、教育体制、キャリアの広がりを具体的に記載します。応募者が「自分にできる仕事か」を判断できるほど、ミスマッチを減らしやすくなります。
初回勤務時の説明、業務チェックリスト、質問先、振り返りのタイミングを決めておきます。教える人によって内容が変わらない状態をつくると、教育担当者の負担も抑えられます。
仕込み量、盛り付け、発注、洗い場の動線などを見直し、専門人材が担うべき仕事に集中できるようにします。省人化ツールの導入も、課題の場所を特定してから検討するのが得策です。
CHEFLINKは、料理人と飲食事業者をつなぐ人材・キャリア支援プラットフォームです。CHEFLINK・SHAREDINEを通じた登録料理人が50,000人を突破。スポット勤務から採用、海外採用支援まで、必要なタイミングとスキルに合わせた人材活用を支援しています。
飲食店の人手不足データが示すのは、単純な人数不足ではありません。非正社員の不足感が高い状態が続く一方、現場では急な欠勤、専門スキル、採用コスト、定着、教育が同時に起きています。
まずは、自店の不足を「いつ」「どの業務で」「どのスキルが」起きているかに分解しましょう。今すぐ営業を守る施策と、採用・定着・教育を立て直す施策を分けて進めることが、持続的な改善への近道です。数字は不安を増やすためではなく、打ち手の焦点を合わせるために使うものです。
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